ピエール・ルメートル『その女アレックス』紹介と感想文:読むときは先入観に惑わされるな!


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人間は先入観を持つ生き物

先日、テレビで亀田大毅さんがしくじり先生の授業を行い、劣等感からの解放で調子に乗り内藤戦に臨み、反則を繰り返した挙句敗戦した当時の事を振り返っていた。

確かに当時、鮮烈なデビュー戦でインパクトが強く、一気にスターへと駆け上がっていたが、同時に派手な服装やビックマウス。そして内藤戦の反則など、ダーティーなイメージも強かった

ヒーローから一転、どんでん返しで世間からさんざん叩かれ、しくじり先生で当時の感情を吐露していた亀田大毅さんだが、番組では当時の攻撃的な面影などなく、誠意があり、放送後の評判もかなり良かったようだ。

かくいう僕も、当時はあまり好意的に捉えていなかったのにもかかわらず、放送後は「自分自身に真摯に向き合ったいい男だな」と素直に好きになってしまった。自分自身の単純さに呆れてしまう笑。

自身の経験からも、人間の観測点というものがいかに曖昧でいい加減なものだということを改めて思い知った出来事だったが、この作品を読んだ時にも同じような感想を抱いたことがある。

有名作だがピエール・ルメートル『その女アレックス』の書評・紹介をさせていただく。

その女アレックス

本屋に行くと、この作品がとにかく大量の平積みが見られ、人気作なのだなと思っていた。あまりにも猛烈にプッシュされていると「誰が読んでやるかよ」と反対に思ってしまうヒネくれた人間だったので購入を先送りにしていたが、多くの賞や評判を聞いていると読みたくなってしまい、つい誘惑に負けて購入してしまった。そして、評価されることの意味を知ることとなる。

数々の受賞

実際、世界各国でさまざまな章を受賞している。

・このミステリーがすごい!2015 海外部門第1位
・週刊文春ミステリーベスト10 海外部門第1位
・ミステリが読みたい! 海外編第1位
・IN☆POCKET文庫翻訳ミステリー・ベスト10第1位
・英国の英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞

・フランスのリーヴル・ド・ポッシュ読書賞

下二つは海外の賞なので、どれくらい凄いのかは実はあまりわかっていないが、このミスや文春のランキングは信頼できる。実際に読んでみると評価されている理由がよく分かった。

作品の性質上、事前情報が少ないほうが未読の方に楽しんでもらえることは間違いないので可能な限り【ネタバレ回避】で書きたいと思う。

実はシリーズ物の2作目

ピエール・ルメートル作の海外作品でカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第二作目。ちなみに1作目は「悲しみのイレーヌ」。

『その女アレックス』の方が先に有名になったので、なんとなくこちらが第一作たいに扱われているので注意が必要だ。

一応、2016/3/30現在、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズはその2作品以外日本では発売されていないが、

・大きな手段(仮)

・犠牲(仮)

・ロージーとジョン(仮)

という三作の続編がある。いずれ日本でも発売されるに違いない。

簡単なあらすじ

簡単なあらすじとしては、

物語は主人公アレックスが拉致・監禁されるところから始まる。長時間、木箱に閉じ込められ絶望的な時間を過ごす彼女。警察も拉致に気がつき、救出するために全力をあげる。衰弱しきった彼女は瀕死の状態で脱出することが出来るのか。

といったところ。

ただしこの作品は、単純に拉致され脱出するだけの女性のサバイバル物語でも、警察が彼女を捜索し救出するヒーロー劇でもない。

題名のとおり、その女、アレックスとはどのような女性なのか?というその一点のみが逆転につぐ逆転の物語を展開し続ける。細かい説明をするべき作品ではないのであらすじについてはこの程度にしておく。

先入観のぐらつき

この作品、感想は容易に伝えられるが、書評・紹介が何よりも難しい。というのも、解説をしようとすると自動的に物語の本質的急所を突いてしまうからだ。

故に『効果的に先入観のギャップを楽しむことが出来るのか?』というポイントを二点ほど挙げたいと思う。

 ■一点目は?

なるべく主人公アレックスに感情移入して読むこと。

非常に残酷な描写のある物語なので読んでいて辛くなってくるが、それでも是非ともアレックスに自己投影して読んでもらいたい。

■二点目は?

読み始めた時の印象、読んでいる最中の印象、読み終わった後の印象をしっかりと刻みながら読んでいくこと。

自らの感覚・印象を自問自答して読むことで、結末を迎えたあとに自分の抱く感情や倫理観が180度変わったものになる感覚を味わえる。同時にその感覚・印象がいかに曖昧で、信憑性が低いものであることに恐怖を覚える。

良くも悪くも、そんな先入観のぐらつきを楽しめる数少ない作品となっているので、是非それらを意識して読んでもらいたい。

映画『ソルト』

先入観といえば、見事に観客の先入観をコントロールしてみせた『ソルト』という映画がある。

あまり細かく書いてしまうと本編のネタバレになるので柔らかく説明すると、

CIAエージェントのソルト(アンジェリーナ・ジョリー)が、ロシアスパイの嫌疑をかけられる。
拘束されたソルトは隙をみて逃亡し、追跡をかわしながら、自らの容疑を晴らすべく行動していく。

そんな話なのだが、主人公のソルトが本当にCIA側なのかロシアスパイ側なのかの説明が一切ないところにこの映画の特徴がある。

つまりソルトの行動を見ることで、視聴者がソルトという人間の立場と人間性を判断しなければならない。先入観や現在与えられている情報から推測する人間像がいかに曖昧で、頼りないものかを”楽しめる”代表的な映画だと思う。

 

海外ドラマ化するらしい

ちなみに映画『ソルト』は、ソニー・ピクチャーズにて、テレビドラマ化が決定しているそうだ。リメイクなのか続編なのかは不明だが、監督は同作品「ソルト」や名作「ボーン・コレクター」で有名なフィリップ・ノイス氏がメガホンをとるのではと噂されている。楽しみだ。

ところがソルトの主演女優であるアンジェリーナ・ジョリーは2016/04/12現在激痩せで35kgだそうだ。あれだけ魅力的だったのにいったい何があったのか・・・。ガリガリヨクナイヨ。

でも、ガリガリ状態であれば『その女アレックス』の拉致監禁シーンにマッチするのかもしれない。。。

最後に

ただのカンだが、比較的早いタイミングで『その女アレックス』は映画化するのではないかと期待している。もし映画化が決まったとしても内容的にかなりハードのなのでR指定が入るのではないかと思う。

同じR指定でもエロスのR指定ではなく、グロさからくるR指定では、テンションは上がらないので観に行くべきかは要検討だ。ただそれもある意味では先入観でしかないのだが。